なつかしい科学絵本といえば『せいめいのれきし』。2015年に改訂版が登場している。そして2017年出版の『深読み!絵本『せいめいのれきし』』がよきコンパニオンだ。
『せいめいのれきし』
あたたかなイラストとおはなしで見せてくれる絵本
『ちいさなおうち』で有名なアメリカのバージニア・リー・バートンさんの『せいめいのれきし』は、銀河の中に太陽が生まれる場面から、恐竜たちのいる場面などを経て、おだやかなわが家の場面まで、劇場の幕仕立てでつぎつぎに、「地球上にせいめいがうまれたときからいままで」をあたたかなイラストとおはなしで見せてくれる絵本だ。
日常生活と科学で描かれる世界を結びつけて
定点観測のように展開される劇場場面が右ページに、左ページにはダイナミックな時間展開を感じさせるイラストとともに、おはなしが描かれている。日常生活と科学で描かれる世界を結びつけてくれるスケールの大きい時間と空間の見せ方には、1977年の有名な映画・写真集「パワーズ・オブ・テン」を連想される方もいらっしゃるかもしれない。
素朴なあたたかさに満ちたヴィンテージ感
最新のCG映像なら、もっとすごい表現が実現可能だろうけれど、そこは、『ちいさなおうち』のバートンである。原書1962年刊、日本語版1964年刊と古い古い、そう、この絵本、素朴なあたたかさに満ちたヴィンテージ感が、たまらないのである。やわらかでおしゃれなイラストによる宇宙、地球、植物、動物、田園風景。三葉虫や恐竜のチャーミングなこと。
『深読み!絵本『せいめいのれきし』』
そして、改訂版の監修者である真鍋真さんによる『深読み!絵本『せいめいのれきし』』で、改訂版にまつわるお話を知ることができる。
アロサウルスのしっぽのはなし。国立科学博物館で1964年に日本ではじめて恐竜の全身骨格展示をしたのがアロサウルス。頭部以外はほぼ全身が実物化石だった。当時、これを見て、恐竜好きになった少年少女がかなりいたのだが、私財を投じての寄贈によるものだったという。
このアロサウルス、かつて恐竜は、尾をは虫類のようにひきずっていたと考えられていたので展示もそうなっていた。現在では、尾を水平に伸ばして重い頭と尾で、前後でヤジロベエのようにバランスをとって立っていたと考えられているため、展示が変えられているそうだ。映画「ジュラシック・パーク」の映像の動きを思い起こしてみられればいい。
子どもの驚きの気持ち
バートンのあたたかでやさしいイラスト、ページをめくると、今のこの場所がかつて熱くどろどろとした溶岩の海だった?地面がうねうね動いていた?マンモスが歩いていた?今・この場所を起点に考える子どもの驚きの気持ちを、素直に思い出させてもらえるだろう。
二つの舞台
手帳には、プラテノドンが飛び、ゴルゴザウルスが歩き、花をつける植物がはじめて地上にあらわれた時代の舞台と、田園の移ろう季節に彩られたおうちのおだやかで心安らぐ風景の舞台のうちの一つを記念に貼った。
(2022.02.26) 手帳2022-100