映画「アリス・イン・ワンダーランド」を見た。きらびやかなCGによるヴィジュアルに圧倒される。
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もちろん、原作は「不思議の国のアリス」で、物語の中の有名なモチーフが取り入れられているが、映画のストーリーは、子どもにもわかりやすい新たな冒険活劇へと仕上げられている。公開時2010年の興行成績が「トイ・ストーリー3」についで2位だったというのも納得できる。ティム・バートンが監督であるとか、ジョニー・ディップが大活躍ということによる人気も一因なのだろう。
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DVDを購入したことを後悔しないのは、ひとえに鮮やかで技巧的なヴィジュアルの豊かさゆえである。ストーリーは単純である。
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華やかな映像の最後を彩るのに、エンディングロールで使われているにぎやかなキノコと花の乱舞が印象的だった。そして、DVDのパッケージにもなっている、アリスが彷徨うキノコの森、そこで出会う、きのこの上にすわって水パイプをくゆらせているイモムシ、手帳に、イモムシとの場面を貼った。左ページはテニエル、右ページは佐々木マキさんの絵である。そして、キノコと花のステッカーをたくさん貼ってみた。イモムシがサナギから出た後の蝶もいちおう貼っておいた。
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イモムシとの場面、白ウサギや帽子屋など、派手な登場キャラクターが登場する場面に比べると地味なのだが、佐々木マキさんが本の表紙絵のモチーフに取り上げたり、映画がストーリー展開の重要な担い手として登場させているぐらい、図柄的にも文章としても見逃せない場面の一つである。
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「あんた、だれだい」(Who are you?)とイモムシに尋ねられ、アリスは今のところ、わからないと答える。伸びたり縮んだりを繰り返すうちに、自分がアリスかどうかわからなくなっているのだ。「私は私でないのです。おわかりでしょ。」(I’m not myself, you see.)と言うのである。手帳に貼った、I can’t explain myself. Because I am not myself, you see. を本のタイトルにしている人がいるのを見つけた。
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映画の中では、子どもの頃に不思議の国で遊んだアリスが、今は成長して期待されているが望まぬ結婚を申し込まれる最中に不思議の国に迷い込み、今のアリスと子どもの頃の勇敢なアリスが同じアリスかどうか繰り返し尋ねられる。
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いろいろな場面に使えそうなことばである。
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なにやら、西欧近代的自己との格闘の根深さが露呈されていて、考え出すとたいへんなことになってしまうなと避けて通りたい気持ち半分だけれど、西欧近代にどっぷり浸かっている今の世の中では、絶えず突きつけられて問題になっていることだよなと、心に響くところもある。
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映画の、鮮やかでアメリカ的なヴィジュアルに圧倒されながらもストーリーの単純さを目の当たりにして、アリスと手帳で戯れながら、余計なことをいろいろと思うのだった。
(2021.11.12) 手帳2021-47