「逃げ恥」はうまくいかない!?行動経済学まんが『ヘンテコノミクス』を読んだ。ピタゴラスイッチなどで人気の佐藤雅彦さん他による一冊である。


『ヘンテコノミクス』行動経済学のまんが
実験で明らかにされた人間の行動
人間は自分の利益を最大限にするために合理的に行動するとは限らない。
たとえば、人は自分の思いやりでやっていることに、その行為の対価として金を支払われると、少しでもお金をもらっておいた方が得になるにもかかわらず、やる気をなくすことがある。そんな人間の心理を実験で明らかにしたのが行動経済学である。
合理的に行動しないが、それを制御できるのが人間
他にも合理的に行動しない人間のありさまについて、いろいろなことが心理学では明らかになっている。そして重要なことは、それらの不合理な行動を予測して制御できる可能性があるということである。
23種類のまんがでお金との幸福なつきあい方の知恵を
『ヘンテコノミクス』では、経済にまつわる人間の心理についての奇妙さを、23種類、まんがで紹介してくれる。まんがのタッチがややレトロだとする方もいるものの、23話の内容はあっという間にすんなり読めて、楽しめるようだ。そして読み通せば、お金との幸福なつきあい方の知恵が身につく次第だ。
『予想どおりに不合理』で理解を深める
評判の、やさしい行動経済学の元祖
実は、こうした経済にまつわる人間の心理の不思議と対処法をわたしたちにやさしく説き明かしてくれる本として『予想どおりに不合理』がかねてより有名で評判だった。

一流の行動経済学者であるダン・アリエリーさんによって書かれたこの本の方が、深みはもちろん、おもしろさひとしおという方も多いのだが、まんがであり、手軽に読み通せる『ヘンテコノミクス』の魅力は捨てがたい。
家族みんなで楽しめる『ヘンテコノミクス』
ややこじつけ気味のまんががあるとはいわれはしても、『ヘンテコノミクス』は、子どもを含め、家族で楽しむこともできる本になっている。電車の中で立って読むのには扱いづらいかもしれないが、ハードカバーの丁寧な本のつくりは、佐藤雅彦さんがかかわっている本らしく、愛着を誘われる。
『ヘンテコノミクス』を、へーっ!と驚きながらまず気軽に楽しんでみるのは悪くない。行動経済学や心理学に興味がわいた方は、さらに文庫や新書の読み物に進むこともできる。
「逃げ恥」はうまく行かない?
いったんお金が元になった関係になり、市場規範にもとづく行動原理にしたがうようになってしまうと、慈恵に満ちた社会規範にもとづく行動原理には推移できなくなるという人間の心理を考えると、「逃げ恥」のように、報酬で成立する偽装夫婦が、報酬とは関係ない実際の夫婦に移行するような場合、幸福になるのは難しいのではないかという方もいる
身近なできごとに引き寄せて考えたくなるトピックス満載
いろいろ、お金にまつわる身近なできごとに引き寄せて考えたくなるトピックスが満載である。
手帳には、『ヘンテコノミクス』のキャッチコピーの書かれた帯つき表紙と裏表紙の写真を貼った。キャッチコピーから感じられるよりも、さらにおもしろく深い世界への入口ともなることだろう。

(2022.02.04) 手帳2022-89