ムーミン谷のクリスマスツリーの挿絵は『ムーミン谷の仲間たち』の中の短編「もみの木」の中に出てくる。ムーミン谷のクリスマスツリー見たいと思いませんか?
♦️♦️♦️♦️♦️
カラーの挿絵がほしければ『ムーミンポストカードブック』で手に入る。
🔶
「もみの木」のお話を絵本にした『ムーミン谷のクリスマス』もある。そして、2017年映画「ムーミン谷とウィンターワンダーランド」には、このクリスマスツリーが登場する。
🔶
ツリーのてっぺんには、ムーミンパパがずっとむかしにママのおくりものにした、赤い絹のばらが、ピンでとめられていて、だれもかれもが、自分のもっているいちばんきれいなものをもってきて、かざってある。
🔶
ヘムルのおばさんには、「あんたたちはいつだって、ほかの人たちとは、すこしかわっていたものね」といわれてしまう個性的な飾りつけのクリスマスツリーだ。
🔶🔶🔶
冬眠中のところを、クリスマスがくるよとヘムルさんにたたきおこされたムーミン一家は、クリスマスが何なのか知らず、得体の知れないクリスマスさんという客人が来るのに備えて右往左往する。そして、わからぬままに用意したツリーもプレゼントもごちそうも、「こういうものをすぐ近くから見たいと、一生思ってたんです」と言う、はい虫たちにすべてあたえ、宴を眺めることで安堵し、ふたたび冬眠に戻っていく。
🔶
ムーミン一家は、自分たちがうかれて騒ぐことはなく、ただ与えて満足する。お祭り騒ぎを自分たちが味わうこと以外のクリスマスの幸せなありかたをわたしたちは見せられることになる。
🔶
そんなことは考えなくとも、ムーミン一家のとんちんかんと、まわりの登場人物のクリスマス準備熱の対比にはクスッとさせられるし、ムーミン谷の美しいクリスマス風景に思いをはせることもできる。
🔶🔶🔶
この「もみの木」のお話が含まれている『ムーミン谷の仲間たち』は、アニメなどでの主要なキャラクター以外の登場者が主役となって輝く短編集で、味わい深い話が集まっている。アニメを見て、そのストーリーのシンプルさにやや物足りなさを感じた大人にもうってつけである。
🔶🔶🔶
ムーミンの作者トーベヤンソンの生誕100周年で盛り上がったのが2014年から2015年にかけて。世界の中でムーミン人気がとりわけ高い日本各地でもムーミン展、トーベヤンソン展が盛大に開催された。(ムーミン展の図録の表紙が、以前ポストしたゴーリーを思わせる上品な黒インク画だったので写真にした。)
🔶
その頃、かわいい!に動かされ、子ども時代に読んだ経験のあるムーミンの本全9冊を手に入れた。トーベ生誕100年限定スペシャルカバーということで淡い色合いが美しいムーミンたちが表紙に躍る本たちだ。
🔶
実は、その際、9冊のうち前期5冊しか読み直していなかった。「もみの木」の含まれている『ムーミン谷の仲間たち』は7冊目の本である。これを読んだのをきっかけに後期4冊に目を通したところ、歳を重ねた者として楽しめる大人の魅力にはじめて出会えたように思った。
🔶
興味を感じて、トーベヤンソン作品の翻訳を多数されている冨原眞弓さんの『ムーミンのふたつの顔』を読んでみた。冨原さんは、前半5冊を夏のシリーズ、後半4冊を冬のシリーズと呼び、「冬」では、「おとなの読者」を考慮し、孤独や老いや不安や自意識といった主題が顔をのぞかせると、また絵にも変化が見られるとしている。
🔶🔶🔶
2019年のフィンランド・イギリス制作のムーミンアニメは、ネットフリックスで全シーズン見ることができるし、11月からNHK Eテレで毎週土曜日に再放送されている。最新の映像スタイルなので、ゲームで眼のこえた子どもも満足できるだろう。ただ、1979年パペットアニメの2012年リマスターを再編集して制作されている、クリスマスツリーの出てくる2017年の映画「ムーミン谷とウィンターワンダーランド」の古びた感じの映像が、とてもヴィンテージ感があって、今見ると新鮮だ。クリスマスシーズンにはぴったりである。
🔶
子どもといっしょに、あるいは子ども心に返ってアニメを楽しみながらも、本を読み返してみることで、大人としての新たな発見が得られることだろう。
♦️♦️♦️♦️♦️
手帳には、冬シリーズの本の表紙の小さい写真を貼った。
(2021.12.13) 手帳2021-63