手帳

クマのプーさんのリアル

2021年11月30日

手帳と『クマのプーさん 世界一有名なテディ・ベアのお話』

プーさんのモデルになったぬいぐるみの本を読んだ。そしてリアルを知った興味で、2つの映画を見た。プーさんをとりまく物語。

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うめはんの英国フェア2021でテディ・ベア展示販売を見たのをきっかけに、プーさんの物語を30年ぶりに読んだことを先日ポストした。ぬいぐるみ自体にも興味がわいて『クマのプーさん 世界一有名なテディ・ベアのおはなし』(原著2011年、日本語訳2013年)を読んだ。カバーには、「ハロッズが過去150年に販売した数知れない商品の中で、このイギリス製のテディ・ベア以上に世界的な名声を勝ち得たものはありません」とある。

『クマのプーさん 世界一有名なテディ・ベアのおはなし』
『クマのプーさん 世界一有名なテディ・ベアのおはなし』

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『クマのプーさん』を書いたミルンは、息子のクリストファー・ロビンがクマのぬいぐるみたちと遊ぶのを見て、物語を生み出した。そのプーであるぬいぐるみが、英国ファーネル社で生まれるところから、ミルンたちを見つめ、現在のニューヨーク公立図書館におさめられ、さらに2011年までのリアルをたどる本である。同時に、ミルン家族と、それをとりまく歴史を知ることができる。
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プーさんの見た風景として、ぬいぐるみが買われた1921年当時のハロッズ百貨店おもちゃ売り場の写真を見ることができたり、テディ・ベアの歴史にふれたりできるのが魅力の本である。ただ、読み進めると、プーさんをめぐる人たちのリアルストーリーが展開されていて、思いがけず、ひきこまれてしまう。

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作家ミルンも挿絵のシェパードも、プーさん以外の大人の作品で成功したがっていた。2人とも才能豊かで、ある程度はそれに成功したが、子ども向けのプーさんほどの名声は得られず、プーさんを苦々しく思っていたとのことだ。
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シェパードが歳を重ねてから描いた絵は、「物語はおしまい。クリストファー・ロビンはプーさんを自分の生活から蹴り出し、学校へ行く」というもので、あのクマにはもう飽き飽きしたと公言していたと『クマのプーさん 世界一有名なテディ・ベアのおはなし』にはある。本に載っていた、クリストファーが乱暴にプーを蹴り上げるシェパードの絵を手帳に貼った。
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クリストファー・ロビンも、本が売れたことが元で、イジメにあうなど苦労し、ミルンとの親子関係も一時期断絶した。あまりにも有名になったクマに人々の人生が翻弄されるのである。

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ミルンが第一次世界大戦の従軍で、帰還後、精神的な困難にあって、いわゆるシェルショックからの救いが、プーやクリストファー・ロビンを描くことだったと言われているのも知った。1990年刊の「ミルン:その人生」(A.A.Milne:His Life)に詳しそうなことがわかって、調べてみたところ、日本語訳が『グッバイ・クリストファー・ロビン』というタイトルで、2018年に出版されていた。
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なんのことはなく、このタイトルは映画のタイトルであった。この本を、下敷きにしながら、フィクションの英国映画が制作され2017年に公開されたため、日本語訳が出版されたのである。この映画、日本では劇場公開されていない。一方で、2018年公開のプーさん映画があったはず、そう、プーさんたちの3Dが登場する、大人になったクリストファー・ロビンを主人公としたディズニーファンタジー実写映画『プーと大人になった僕』(原題はクリストファー・ロビン)である。なぜ、ほぼ同じ時期に2作の映画ができたのか、いろいろ詮索したくなるところだが、それはおいておこう。

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プーのぬいぐるみやミルンのリアルの物語を読んでおもしろかったので、映画『グッバイ・クリストファー・ロビン』を見ることにした。アマゾンでレンタル300円だった。実はアマゾンでレンタルは初めてだ。それほど、見てみたいと思った。
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実話とは異なる部分も多かったが、森の情景がなんとも美しいのに加え、キャスト、ファッションも魅力的で、シナリオにも引き込まれた。
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味をしめ、ディズニー映画の方も見てみた。レンタル500円。小さなお子さんのいらっしゃる家族向きといった感じである。さすがアメリカ映画、ディズニー映画、お金がもうかるのは、こちらだろう。3Dのプーさんたち、なかなかかわいいし、現実逃避させてくれるスカッとしたストーリーはお見事。日本では堺雅人さんが主演の吹替をして、劇場公開されているので、映画館でご覧になった方もいらっしゃるかもしれない。
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リアル・プーさんに興味を持って映画を見始めたわたしは、口直しに『グッバイ・クリストファー・ロビン』をもう一度見た。プーの物語の最後にクリストファー・ロビンとプーが語り合う場所で、ミルンと実際のクリストファー・ロビンが過ごす。子どものクリストファーと、そして成長後のクリストファーと。親子の関係が、プーの物語の中のクリストファーとプーの関係に投影される。

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ロンドン郊外ハートフィールドのアッシュタウン・フォレスト、100エーカーの森のてっぺんの岩にシンプルなブロンズ板があってミルンとシェパードの名が刻まれている。その場所にかけられた魔法がとけないように、道しるべは立てられていない。ミルンは別の場所だが散骨だったので、このブロンズ板が墓に代わるような記念碑である。

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手帳に貼った絵、ぬいぐるみのプーさんを蹴り上げるのはクリストファーが男の子だから?男の子だっていつまでもぬいぐるみといっしょにいていいんだよ。ミルンやシェパードは、子どもの物語ごときで名を残しても本望ではなかったようだけれど、恥じることなんてどこにもないはず。

(2021.11.30)  手帳2021-56

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