緑のローブを着たり痩せたりしているサンタを、今みたいなサンタにしたのはコカコーラの広告!?『裸のサル』や『マン・ウォッチング』で有名なイギリスの動物行動研究者デズモンド・モリスさんの『クリスマス・ウォッチング』を読んだところ、そこに書いてあった。

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なぜクリスマスにはツリーを飾るのか?なぜサンタは煙突から家に入るのか?クリスマスにまつわるなぜをやさしく解き明かしてくれるのが、『クリスマス・ウォッチング』である。日本語版表紙は和田誠さんで愛らしい本、イギリスならではのクリスマスの習慣に興味がある方にもうってつけだ。クリスマスにはなぜミンス・パイを食べるのか?なぜパントマイムを観るのか?女王はなぜクリスマスに放送をするのか?
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この本の中に、サンタクロースがあの独特の衣装を着るようになったのはなぜ?という項目がある。海外の方の作った、古いクリスマス画像のダウンロード素材の中に、緑色のローブを着て痩せたサンタがあって、違和感を感じ、不思議に思っていたところだったので、とびついて読んだ。

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いろいろな姿のサンタがいたが、今のような、白い毛で縁どりされた赤いナイトキャップと衣服を着てブーツをはいた太っちょサンタは、コカコーラの広告が作り出したという。1931年のクリスマスキャンペーン用に画家ハッドン・サンドブロムが描いて以来の絵である。下の写真は、コカコーラのヴィンテージ広告である。

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おもしろいなあと感心したのだが、調べてみると新たにわかったことがある。コカコーラの広告で現代のサンタの姿がはじめてできあがったというのは、事実とは異なると、近年、いわれるようになっていたのだ。『クリスマス・ウォッチング』は1994年刊と、だいぶ前の本である。
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聖人である、セント・ニコラウス(オランダ語シンタクラース)の伝説がもとになっているサンタクロース、1823年に米国のクレメント・クラーク・ムーアの詩で、トナカイの引くソリに乗ってやってきて、煙突から入りプレゼントを置いていくサンタが初めて登場した。これが現代のサンタの物語の源流である。
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実は、1931年にハッドン・サンドブロムがコカコーラ用に絵を描く前にも、現代のサンタ像に通ずる絵はあった。米国の画家トーマス・ナストの1881年に描いたサンタである。

また、日本で1914年に出された『子供之友』にも現代のサンタ像が既に登場している。

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ご存知、ノーマン・ロックウェルも既に1926年に現代に通ずるサンタの絵を描いている。ノーマン・ロックウェルの描いたサンタのうちの1枚である。

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サンタのイラストといえば、今はおきまりの衣装で描かれ、サンタに扮装するとなれば、格好は決まっているが、古くはそうではなかった。長年にわたり、現代のようなサンタ像が作り上げられてきたのである。一時は、コカコーラの広告で、現代のサンタ像がつくられたと言われていたが、それは事実ではなかった。広く世界にイメージを流通させる役割を果たしたとはいえるかもしれないけれど。
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手帳に、痩せた精悍なサンタも貼った。一人は緑色のローブを着ている。愛されキャラの今のサンタができあがるまでの道のりに思いをはせると、なかなかおもしろいということがわかった次第だ。
(2021.12.07) 手帳2021-60