きらり多面体、くす玉多面体よりきれいだ。おりがみで多面体を楽しんだ。楽しむコツは?
『はじめての多面体おりがみ』
くす玉ではない、シンプルな多面体が美しい
おりがみで多面体をつくるというテーマの本はけっこうある。その中で、注目したのが、川村みゆきさんの『はじめての多面体おりがみ』だ。
柄つきおりがみをあしらった、華やかなくす玉のような多面体の本が多い中、図形的(幾何的)な何か崇高さを感じるシンプルな組み立てによる多面体のつくり方がずらりとこの本の中では紹介されている。使われているおりがみの色もモンドリアンの絵のようで美しい。
金平糖のような、正20面体の星形
視覚化が得意な数式ソフトであるマセマティカの魅惑的なデモグラフィックスを彷彿とさせる、金平糖のような、正20面体の星形に、まず目を奪われた。おりがみ1枚で1ユニットつくり、それを30個組み合わせて出来上がりだ。
ユニットを折ってみたが、本の中の最初のやさしいものから順にこなしていかないと折れないということはなく、いきなり本の途中にあるページの作り方の図を見ても、かんたんに折ることができる。無事、1個目の多面体として正20面体を作ることができた。
正5角形の面でできた正12面体
つぎに、一つの面が正5角形をしている正12面体に惹かれて作ってみた。独特のユニットを12枚折り上げてから組み合わせて無事完成だ。
使うおりがみのコツ
コシの強いやや厚めのおりがみがオススメ
解説の図版は、とても見やすく心地よい。楽しくつくるコツとしては、使うおりがみに気をつけることかと思う。古くからある、普通のおりがみよりも、コシの強いやや厚めのおりがみの方がオススメだ。面に張りが出るので、組み立てやすい。
また、正20面体の星形をつくるとき、ユニットの組み上げで、途中つじつまがあわなくなって、一度、ユニットを10個ほどはずさざるをえなかったのだが、ユニットの接続を固定するのに使った、少量の手芸用速乾ボンドをはがしても、厚めの紙を使っていたので破れることはなく、救われた。
「クラフトおりがみ」と「タント」
ダイソーで見つけた「クラフトおりがみ」40枚入りを使って正20面体の星形は作った。
本には、有名な両面おりがみ「タント」がサンプルとして24枚ついてくる。正12面体は、こちらで作ってみた。価格が100均のようなわけにはいかない点はともかくとして、価格を気にしなければ「タント」の方が楽しくつくれるかというと、必ずしもそうはいえないという印象だ。
比較すれば、タントの質感がいいことは誰もが認めるだろうなとは思うものの、正20面体の星形は、タントよりも厚手の「クラフトおりがみ」でのほうが作りやすい方が多いのではないかという気がした。それでいて、質感もそこそこいい。こちらのほうが好みという方さえいるかもしれないぐらいだ。
「クラフトおりがみ」を使って
多面体では、角をしっかりさせたいところだが、「タント」だと、質感のよさのため、折りすじをはっきりとさせにくいようにも感じた。折り方に慣れが必要とされるのかもしれない。本の掲載写真の多面体は「タント」で折ったのだろうか、とてもきれいなのだが、「タント」を使えば写真のようにうまくいくというわけではない。
ユニットを大量につくるために、気軽に使える点でも「クラフトおりがみ」は、なかなかありがたい。ただし、パッケージに入っている黒は、ユニットに使わなかった。
おりがみ多面体の本
おりがみ多面体の本はいろいろあるが
飾りになるくす玉的な多面体の方が幾何的な多面体よりいいなという方には、この本ではなく、もっと相性のいい、おりがみ多面体の本がたくさんある。ただ、幾何的な多面体がきれいだなと感じたり、少しでも魅力を感じる方には、この本、たまらないはずだ。
広大なものにつながっていそうな感じがいい
著者の川村みゆきさんは、数学っぽいおりがみの本『多面体の折紙』も書かれていらっしゃる。なにか、広大なものにつながっていそうと感じさせる多面体の作り方がやさしく書かれている『はじめての多面体おりがみ』は、子どもから大人まで、たくさんの人を魅了しているようだ。
おりがみつきではなくなったけれど
2015年に発売されたとき、とびついた、この本、家で発掘して、はじめて実際に作ってみてあらためて惚れ惚れした。調べたところ、今、売られている2018年刊の新装版には、おりがみがついていないようである。「タント」がついていることによって、この本の多面体づくりを楽しむには紙選びがコツですよというメッセージになっていたかと思うのだが。
手帳には、作った正20面体の星形と正12面体の写真を大満足で記念に貼った。
(2022.02.08) 手帳2022-91