有名なウィリアム・モリスの模様、あらためて手持ちの素材の来歴を確認して楽しんだ。手帳の左はモリスの処女作「ひなぎく」で、右が最も有名な「いちご泥棒」である。
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モリスが、後に壁紙にした刺繍の壁掛け「ひなぎく」を28歳で発表した1862年、同じイギリスでルイス・キャロルは、川遊びをしながら、アリスに即興で物語を聞かせていた。その物語は、1865年に『不思議の国のアリス』として世に出る。モリスはキャロルより2歳若いが、同じ国の同時代人である。
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モリスの模様は、王侯貴族のためではなく、ヴィクトリア朝の市民の家の装飾過多な室内を彩るものとして人気を博した。アリスの部屋の壁紙はどんな風だったろう。
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そして、モリスの模様は、自然をモチーフにして平面的で輪郭線が際立っているのが特徴的である。ちょうど同じ頃、ジャポニズムが市民の間で盛り上がり、日本の工芸品が流行していた。その影響はなかったのかなどと想像してみたくもなる。後に続くアール・ヌーヴォーについては日本文化の影響が云々されるけれど、モリスについては言われないようだ。
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左の「ひなぎく」が壁紙なのに対し、右の「いちご泥棒」はテキスタイルである。1883年に苦労してインディゴ染料による深い青の染色に成功した作だ。小鳥と花といちごが、青い森を背景に浮き立っていて、その青にはジャパンブルーの藍染めの色を想起させられる。
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多くの人から愛されるモリスの模様は、今後もまたこの手帳のコラージュに登場することだろう。
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写真の本は、『ウィリアム・モリス クラシカルで美しいパターンとデザイン』(パイ インターナショナル、2013年)である。表紙は「いちご泥棒」をモチーフに金箔エンボス加工されていて、中のページも美しくレイアウトされ、多数のモリスの模様の鮮やかな再現がまばゆい。くわえて解説がわかりやすい書きぶりで読みやすい。モリスの人生についてもちゃんと紹介されている。人気なのがうなずける一冊である。図版の充実ぶりからしても3,080円はお買い得だといっていい。
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ちなみに、この本にキャロルのことや、ジャポニズムが出てくるわけではない。ここだけの話である。
(2021.11.10) 手帳2021-46